おとなのお遊び

18禁と女装の話

感想文 家畜人ヤプー あとがき 沼正三 著

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元々、5分冊の一巻づつエントリーを上げている時点で、冗長かなとは思っていました。更にあとがきだけで感想文を書くのもひどい話だなと思います。ですが、ちょっとした発見がありありましたのでお許し下さい。

捕虜生活で経験した絶対的隷属

あとがきで、作者は、学徒兵として動員→捕虜生活を体験していることを暴露しています。そして、その捕虜生活中、白人女性に対して被虐的性感を強制されるような境遇に置かれたと書かれていました。捕虜生活となると、管理側の人間はそれこそ相手の生殺与奪権を握った絶対者ですので、反抗することは許されません。その英国女性が倒錯的性愛を作者に強制したとしたら、そりゃ、こういう反応になるよね。と思ってしまうのです。ただ、このような状況においても、被支配側に置かれた人は2つの選択肢があります。一つはひたすら抵抗を続けて、いづれ開放されるか、死に追いやられるまで、支配者の軍門には下らないという選択です。恐らく、白人から倒錯的性愛を強制された日本人は9割方こちらになると思います。
もう一つの選択は、唯々諾々と自分を与えられた環境に沈め、むしろ倒錯的性愛を受け入れるというものです。作者はこちらの道を選びました。それが彼のその後の性癖を決定づけたのです。

人種的劣等感

捕虜時代に白人に隷属することを強いられ、敗戦とともに帰国したと思われる作者ですが、帰ってみると、日本の都市は焦土と化し、生き残った人々は米兵が投げ渡すガムやチョコレートを愛想笑いを浮かべながら拾い集めるようなプライドの欠片もない人種に成り下がっていました。この様子を見るにつけ、作者はますます「白神信仰」に傾倒してゆくことになるのです。
第三巻から第五巻は日本のバブルの前後に書かれているので、英国の勢いはかつての隆盛の見る影もない状態になっているのですが、この点では作者は揺るぎません。世界を治めるイースは英国人貴族の末裔により運営されています。
これは、作者に倒錯的性愛を強制した白人が英国人だったことに由来しています。作者とこの女性は、終戦後数十年経った後、手紙ですが交流を再開したようです。作者にとってはこの女性が「心の拠り所」だったのです。そして、日本人に対しては「なんだこの腑抜け者共は」と思ったことでしょう。学徒兵で戦地に赴き、天皇のための死を覚悟していたはずですから尚更のことです。その裏返しとしての白神信仰が更に高まります。

SMプレイと呼ばれる行為は殆ど登場しなかった

5巻を通じて、団鬼六の小説に出てくるようなSMプレイ、いわゆる鞭、緊縛、蝋燭などは殆ど出てきません。鞭は僅かに登場シーンが有りますが、作者は恐らく鞭の痛みに満足を見出すタイプでは無かったようです。作者にとってのSM的行為とは、白人女性に無条件に隷属することと、女性の排泄物を食することであったようです。しょっぱなのセッチンの細かい描写に始まり、尿や便を用いた奴隷化の儀式、そしてその儀式が皇室にまで及ぶような描写を見るにつけ、作者にとってのSMは、支配・被支配の関係を明確にすることと、排泄物への特別な感情的な思い込みで構成されていることが分かります。
追求する方向が特定の方向に尖っていることは、僕はとやかく言いません。僕自身は自分の体に与えられる痛覚、特に一本鞭で打ち据えられる時の膚を切り裂くような痛みが好きなのですが、そのこともSM愛好者の中ですら異端であることは分かっているつもりです。
世の中で「僕はドMです」という人間を10人連れて来たら、10通りのSMプレイが展開されるであろうことは想像がつきます。鞭、蝋燭、スカトロ(スカトロでも何種類もあります)、顔面騎乗、羞恥責め、緊縛、水責め、針刺し、流血、金蹴り、etc。
SMはファンタジーであり、プレイする人が脳内で作ったシナリオに対して感じる事になるので、こんなことになっちゃうんですね。
脱線しましたが、この家畜人ヤプーで描かれているのは、女性に隷属する倒錯感で倒錯的性愛を満たすことがまず第一にあると思われます。次に、それを補完するものとして、排泄物への志向が見られます。
プレイとして見た場合、鞭責めシーンがないので、これがAVであれば、最後まで早送りして終わってしまうのですが、この本ではリンからクララへの思慕の描写を通して、女性に隷属する倒錯感の描写が素晴らしく、その部分で大量の読者を満足させていると思います。物理的なプレイは10人10色で誰もが満足するものは無いのですが、根底には相手の女性への崇拝が有るはずですので、ここで普遍的に「マゾのバイブル」として定着したのであろうと思いました。

 

これにて、家畜人ヤプーをようやく読み終わりました。次はソドム百二十日でも読もうかな。

 

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